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長男・そうちゃん

長男・そうちゃん


私の長男・そうちゃんは、ソトス症候群という、聞きなれない病気をもってこの世に生まれてきた。(そういえば、その病名が、聞いたことのない珍しい名前だったので、家族みんな、なかなか覚えられなかった。「ポトフ、みたいな名前だっけ?」や「トポスだった?」などと、毎回懲りず皆が言うので、よけいややこしくなったのだった。ちなみに姉・りかちゃんは、ワインの名前はすぐに覚えますが、それ以外のことは覚えるまでに、かなりの時間を要します。)

思い起こせば・・・。そうちゃんは、生まれた次の日、呼吸が苦しくなり、救急車で大学病院のNICUへ転院。ミルクを飲む力さえなく、しばらくはチューブを鼻からとおし栄養をとっていた。そして、呼吸が苦しいのは、心臓の病気が原因であることがわかり、手術をすることに。
(もし、その手術で状態がよくならなければ、3歳までしか生きられない、と医師から言われた。)けれど、手術の日程が決まり、さあいよいよという時、精密検査をすると、心臓の状態が改善傾向にあり、自然治癒の可能性が高まったため、手術の必要はなくなった。

その後、そうちゃんに、ソトス症候群という障害があること。そうちゃんはこの先、歩けるようになるかもしれないが、一生歩けず、車椅子の生活になるかもしれないこと。少しは言葉が話せるようになるかもしれないが、まったくお話できないという可能性もあること。病院の先生の口から、そんな話が次々と出てくるものの、どこか漠然とした不安がふくらむだけで、現実のこととしてなかなか受け入れられなかった、あの頃。

ソトス症候群という病気は、染色体異常によるものらしいが、たいていはその場合、妊娠の初期の段階で流産となり、自然淘汰されることが多いと聞く。それなのに、そうちゃんは、10ヶ月間、一生懸命、私のお腹の中でへばりつき、この世におめみえした。そうちゃん自身、ぜひとも生まれてきたいと思う力が、ものすごく強かったのだと思う。そして、何か、メッセージを伝えるため、この世に誕生したんじゃないかな、とも思う。

私だって、どこから来たのかも、これからどこへ行くのかもわからないのだから、今日、今、ここにいることは、“たまたまの偶然”である事には違いないけれど、いつの日もいつの日も、小さい体で大変な困難に直面し、でも、ひとつひとつ、小さな体で乗り越えてきたそうちゃんを目の前で見ていると、そうちゃんがここにいることは、稀有な事であり、いろんなことが重なり合った偶然なのだと、つくづく思う。そして、だからこそ、親というよりは、一人の人間からみて、「そうちゃんって、すごいなあ」と心から思う。

あれからもうすぐ20年。そうちゃんは、自分の足で地面をけって歩き、私のことをニコニコとろけそうな顔で「ママ~」とよんでくれる。

桜の花が咲く頃、そうちゃんは、いつもお誕生日を迎えます。

 

高木千春

高木千春

福岡生まれ。行正り香の1つ違いの妹。「ちはるのお笑い日記」執筆中。

4件のフィードバック

  1. 桜が咲き始めるのももうすぐですね。
    そうちゃん、ママ、お誕生日おめでとうございます。

  2. 千春さん、り香さん、こんにちは。
    今日はとても暖かいですね。

    子供ってすごいですよね。
    私の子は元気に生まれてきたけれど、その後何年かして病気になって、退院したけどまた病気になって。

    ちょうど去年の今頃再発したので、最近毎日のようにその頃の事を思い出します。今回の治療は本当にきつくて。どうなってしまうんだろう?という日が何日も続いたけれど、、今年に入って退院できました。
    前回退院した後は、色んな事を普通に戻さなきゃって、学校に毎日通うことが一番と思っていました。疲れてしまうから、風邪をもらったりするから、とどこにも連れて行ってあげませんでした。
    再発したとわかった時、これは後悔に変わりました。

    今回は、まだまだ体力も戻ってないんですが、のんびりいきたいなと思っています。

    私の人生の先輩でもある友人が、生きていてくれてありがとうだよね。
    と言いました。
    本当にそうです。

    毎日寝顔を見る度、生きていてくれてありがとうって心の中で言っています。

  3. 千春さんへ。はじめまして。そうちゃんのお誕生日おめでとうございます。節目である20年を迎える日は祝福のシャワーを受けることでしょう。次の未来がはじまる未来あふれりはそうちゃんとますますお幸せに。素敵なお手紙のようなブログを楽しみにしていますo(^o^)o

  4. 千春さん、こんにちは。そうちゃんも、お元気ですか?
    千春さんがそうちゃんと離れて暮らす決断をされた時、とても驚きました。でも、小6の息子が山村留学に行かせて!と言った時に、そのことをふと思い出して、行かせてやることに決めました。発達凸凹のある子ですが一年間やりきりました(^^) 給食を楽しみに頑張ったようです。

    手放すことは寂しいけれど、子どもはそれで育つのだなぁ、としみじみ感じています。息子の背中を押させてくれたそうちゃんに感謝です、ありがとうございます。(そうちゃんの似顔絵に、息子はちょっと似ています、可愛いです☆)

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